アトピー性皮膚炎

外用薬

　外用薬による薬物療法には、ステロイド系のものと非ステロイド系の2種類があり、過剰な免疫反応を抑える目的で使用します。

1. ステロイド外用薬
   　ステロイドは副腎皮質ホルモンの一種で、炎症や免疫反応を抑える働きをします。ただし、誤った使用法や過剰な連続使用には副作用の心配がありますので、医師の指示通りの量と使用回数などを守って、正しく使用する必要があります。
2. 免疫抑制外用薬
   　非ステロイド系のもので、同様に免疫の過剰反応を抑える働きがあります。ステロイド外用薬の効果があまり得られない場合や、長期使用で副作用が心配な時などに使用します。

内服薬（飲み薬）

1. 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬
   　強い痒みによって皮膚を掻きむしることで、皮膚のバリア機能が破綻し、さらに状態を悪化させてしまいます。これを防ぐために痒みを起こすヒスタミンの活動を抑えたり、アレルギー反応を抑えたりする内服薬を服用します。
2. ステロイドの飲み薬
   　外用薬では対応できないほど重症化することがあります。そんな場合はより強力なステロイド内服薬を服用します。副作用を抑えるため、医師の指示通りの量、回数をしっかりと守る必要があります。一定の期間のみ使用します。
3. 免疫抑制薬
   　強い炎症による湿疹を起こしている16歳以上の患者さんで、ここまでに上げた薬物療法による効果が得られない場合に使用します。この薬は、使用期間中に血圧の上昇や腎機能の低下といった強い副作用が出る可能性もあり、服用期間を3か月に限って使用します。
   　当院では免疫抑制剤の治療は行っておりませんので、必要な場合は連係する皮膚科専門医を紹介しております。

注射薬

　炎症はインターロイキンという体内物質が過剰に働くことによって起こっています。この物質の働きを抑制する薬液を注射で投与します。
　これまでの治療で効果を得られず、強い炎症の湿疹がある成人の患者さんのみに適応する治療法で、外用薬療法と同時に行う必要があります。
　当院では、注射療法には対応しておりませんので、必要と判断した場合は連係する皮膚科専門医を紹介しております。

保湿剤

　皮膚のバリア機能が低下するため、乾燥肌によって原因物質の侵入を許しやすくなり、また皮膚の保湿成分が発散してしまうことによってさらに皮膚のバリア機能が低下するという悪循環に陥りやすいため、アトピー性皮膚炎を悪化させないためには保湿は大切です。
　そのため、外用薬とともに保湿剤を塗布して、皮膚の乾燥を防ぎます。
ヘパリン類似物質やワセリンなどが主なもので、クリーム、ローション、軟膏など様々な形態のものがありますので、症状や体質、季節にあわせて処方します。
　市販の保湿剤ではなく、医師の処方による保湿剤を使用することをお勧めします。

スキンケア

　アトピー性皮膚炎では、スキンケアが非常に大切です。スキンケアによって保湿と同時に肌を清潔に保っていくことで、皮膚のバリア機能を低下させないようにします。
　日常生活の注意点としては、まず皮膚についた汗、汚れはそのままにせず、すぐに洗い落とします。肌を洗う場合は、タオルなどで擦るのは厳禁です。手で優しく洗うようにしてください。小さな子どもで、自分でできない場合は、保護者の方が手で優しく洗ってあげてください。
　石けんは、できる限り添加物の入っていないものを使用することをお勧めします。
また、入浴はぬるま湯程度で肌を刺激しないように気をつけ、またお風呂の後は急速に肌が乾燥するため、すぐに保湿剤を塗ってください。

原因の除去

　日常生活の中には多くの、アトピー性皮膚炎の悪化要因が存在します。すべてそれらを取り除くことは無理でも、分かっているものだけでもできる限りそれらを避けることも大切です。
　洗濯の際、洗剤は天然成分由来のものを選び、香料なども入っていないものが良いでしょう。また、洗剤を使ったあとすすぎを多めにして、しっかり洗剤を落とします。
　室内は風通し良く、清潔にし、ハウスダストをなくすようにします。衣類の材質にも注意し、お肌に刺激のあるような、がさがさしていたり、チクチクしたりするようなものは避けましょう。また、ペットの毛なども悪化要因の一つとなりますので注意が必要です。

薬物療法・外用薬の上手な使い方

薬の塗り方のコツ

• 薬を塗る前にはしっかりと手を洗い、清潔にします
• 必要な量を、優しく拡げるようにして塗ります
• 外用薬を塗る時に、保湿剤も同時に使用し、しっかりと保湿します
• 塗る部分によって吸収率が違います。特に手の平、足の裏などは吸収率が低いため多めに塗りましょう