子宮頸がんは子宮の入口(頸部)にできる癌で、日本では毎年1万人が子宮頸がんにかかり、約3千人が亡くなります。近年は若い世代で多くなっており発症のピークは30代です。また20代、30代の女性で子宮頸がんのために妊娠できなくなる女性が毎年1200人います。
妊娠・出産・子育ての時期に罹患してしまう子宮頸がんの殆どはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因と言われており、特に2つのタイプ(HPV16型と18型)によるものが子宮頸がん全体の50~70%を占めており、そのHPV感染を予防するワクチンが子宮頸がんワクチンなのです。子宮頸がんワクチンでのHPV感染予防と、20歳以降の定期的な子宮がん検診受診とで子宮頸がんはかなり高い確率で予防できます。
子宮頸がんワクチンは2013年に定期接種となりましたが、その後副作用の可能性がマスコミで大々的に報道され『積極的勧奨の中止』となっていました。しかし様々な点から厚生省は各種の症状と子宮頸がんワクチンとの関連性はない、との判断となり、ワクチンの接種が再開されています。世界を見渡せば先進国を中心に子宮頸がんワクチンを導入した国(オーストラリアやアメリカ、イギリス等)では、すでに子宮頸部の前がん病変の減少が認められています。子宮頸がんワクチンはHPVの感染のきっかけとなる性交渉を経験する前の10歳代前半に接種をすることが推奨されており、定期接種は小学6年生~高校1年生の間に接種するスケジュールです。2023年4月からは9価のワクチンも公費対象となり、子宮頚部前がん病変を含め原因となるHPVの90%以上の免疫をカバーする事が出来るようになりました。
子宮頸がんワクチンがこれまでのワクチンと異なる点は、以下2点だと思います。
①筋肉内注射であること
子宮頸がんワクチンは皮下注射ではなく筋肉内注射である点です。痛みはこれまでのものより大きいかもしれませんし、肩に接種するので袖を肩が見えるまでまくってもらわないといけません。ただ筋肉内注射は欧米では他ワクチンもほぼ全て筋肉内注射であり正しく行えば全く心配のない接種方法です。
②思春期の女児が対象
思春期は、だれしも人間関係や学業など色々な意味で悩みがある年代です。接種時の痛みをきっかけに普段の悩みが身体的な症状として現れる可能性はゼロではありません。万が一ワクチンの後に、ワクチンとは一般的に結びつかない何らかの症状を訴えた場合も、ワクチンはきっかけであり、原因ではないと考えられます以上2点が今まで受けてきたワクチンと差異があり気になる点もあるかもしれませんが、現時点でがんが予防できるワクチンは子宮頸がんワクチンとB型肝炎ワクチンの2つだけです。
妊娠した喜びの中、妊婦健診の際に子宮頸がんが見つかり、赤ちゃんごと子宮摘出する痛ましい症例も産婦人科の先生は体験されているとのことです。中学生や高校生のあなたならあなた自身や未来のあなたの赤ちゃんのために、保護者の方ならあなたの大切なお嬢さんと未来のお孫さんを守るために、子宮頸がんワクチンの接種をお願い致します。